PSoC1デジタルLメータのありえない実装

この記事は2008/1/27のものです。

-----------------------------------------------------------------------------------------------

このコンテンツは東京デバイセズさんにプリント基板実装して頂き、
 

tokyodevices.jp

 として発売されました。

2012/4/9

-----------------------------------------------------------------------------------------------

◆意地悪実装

 位相検波はノイズに埋もれがちの小信号を検出する場面で使われます。また、検出端子を4端子にすると試料との接触抵抗の影響を受けにくくなります。 先に製作したPSoC1デジタルLメータは両方の方式で動作しておりますので、どの程度いい加減な実装に耐えるのか気になるところです。

 測定器のブレッドボード実装ってありえないと思うかもしれませんがやってみました。部品点数が比較的少ないのでチャッチャと組みあがります。

f:id:jun930:20190614162933j:plain

◆いけてるんちゃう!?

 ブレッドボードは部品の接触状態が不安定ですから、とんでもない結果になるのではないかと思われますが、やってみると意外にいけちゃっていたりします。(驚)上の写真は10uHのマイクロインダクタを計測しているところです。ユニバーサル基板の実装よりも10%ほど大きめに出ていますが、ブレッドボードの実装で10uHがそれなりに出れば良しにしたいと思います。(恐るべし位相検波&4端子方式)

 ちゃんと調整することはもちろんですが、部品に手を触れなければそれなりの測定ができるようです。(息を吹きかけるのも禁止行為!)ユニバーサル基板の実装と大きく異なる点は位相検波のタイミングでした。

◆実装によって位相差が変わる?

 なぜ実装によって位相差が異なるのか下の図で説明します。

f:id:jun930:20190614162943j:plain

 これは製作したLメータの構成です。PSoCの役割は(1)正弦波の発生と(2)位相検波と(3)AD変換になります。PSoCを出た正弦波はオペアンプのLPF回路に入ります。PSoCで発生する正弦波には内部のスイッチング動作による高周波ノイズが多く含まれています。そのまま使ってしまうと試料に入った正弦波が大きく乱れます。それではマズイのでノイズを除去するアナログのLPFを挿入しています。

 PSoCを出た正弦波はLPFを通過する際に大きな位相差を生じます。ユニバーサル基板との差はこの部分で使っている部品のバラつきやブレッドボードに存在する浮遊容量などが影響しているのではないかと考えられます。

◆ありえない実装も勉強になるなぁ

 位相の調整は実装の状況に応じ細かく調整する必要があることが分かりました。その他にPSoC内部のBPFやオペアンプの応答性能によっても位相差が発生しています。それら全部を加味して位相検波のタイミングを調整する必要があります。位相の調整は思ったよりもセンシティブで、色々と試した結果π/2000(rad)単位に行うようにしました。なかなか奥が深いので勉強になります。