基板パターン切削用エンドミルを研ぐ


 CNCで基板パターンを切削するときにエンドミルの先端が折れてしまうことがあります。ダイヤモンドヤスリで適当に形を整えてみたものの切れ味が悪く、適当な作業ではダメっぽいことを思い知らされました。また、ダイヤモンドヤスリは目が粗すぎて、硬いエンドミルのエッジが欠けてしまう欠点もあります。

 

 ちゃんと研ぐために新品がどーなっているのか良く観察しようと思いました。使っているものは、角度30度、先端0.2mm、径3.175mm、以下の形をしたものです。f:id:jun930:20191225004819j:plain

 三角の2つのエッジを観察すると、短い方(A)と長い方(B)があります。

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Aのエッジは鋭く、以下の矢印部分が平面に落されています。

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 一方、Bのエッジは丸く、ワークの切削面から逃げるように加工されています。

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 Aのエッジで基板の銅を切削する訳ですから、Aのエッジが鈍ってくると切れ味が悪くなる訳です。このときAのエッジのみを研ぐと、AのエッジはBのエッジに近づきますので、先端の0.2mmが狭くなり、芯ブレとなってしまいます。従ってAとBを同じ量研ぎ出し、先端も0.2mmになるように調整しないといけません。そう考えてみると、先端が折れてしまった場合も同様に、AとBを同じだけ研ぐことになります。また、実際はエッジだけではなく丸い部分全体を3次元的に研ぐ必要があるのです。

 

 構造が判ったところで、何でどのよう研いだらよいのか?ダイヤモンドヤスリは既に玉砕しています。普通の砥石も試してみましたが砥汁の色が黒っぽくならず、砥石が減るだけでした。以下のダイヤモンド砥石を試してみました。

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 これはガンガン削れます。しかし、#400番を使うとダイヤモンドヤスリと同様にエッジが欠けてしまいます。エッジ以外の整形には#400を使い、大まかな形が整ったところで、#1000に切り替え力を入れずエッジを研ぐのが良さそうです。

www.tamiya.com 作業は庖丁研ぎと同じ要領ですが、エンドミルは小さく直接持つと安定しないので、3.2mmまでつかめるピンバイスを使用しました。やはり持ち手があると格段に安定します。

 

  刃は研ぎだせそうになってきました。しかし、手作業ですのでA,Bの研ぐ量が変ってしまうと芯がぶれてしまいます。どのように芯を保つかが次の課題になります。

 このエンドミルはシャンク部以外を半月に削り出し先端を三角にしたものです。半月を作る面は円柱の芯にあるはずなので研ぎません。少々のバリが出てしまっても使っているうちに落ちてしまうので放置です。この面には指一本触れません。つまりこれが芯のリファレンスになるはずです。

 芯を確かめるには、回転するフォルダにエンドミルを固定し、研ぎだしている先端が半月面のラインと一致しているか、90度回転させながら見れば良いことになります。しかしながら0.2mm幅の先端のブレを肉眼で見極めることはできませんので、SMDの半田でいつもお世話になっている実体顕微鏡を使うことにしました。

www.hozan.co.jp 半田付けもそうですが見えてしまえば何とかなることが多いです。先端が0.2mmにできるかどうかも、顕微鏡で新品のエンドミルと見比べればOKそうです。

  と言うことでやってみました。

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 研ぎが終わったので、試し切りです。

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 うわ、凄いバリだらけになってしまいました。何が悪いのか?まだまだ腕を磨く必要がありそうですw

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 バリを落としてみると、使えるレベルの仕上がりでした。